令和2年-6年度 文部科学省 科学研究費補助金研究 学術変革領域研究(A)

領域番号:20A102

公募研究

土器を掘る:
22世紀型考古資料学の構築と社会実装をめざした技術開発型研究

領域略称名 土器を掘る
領域番号 20A102
設定期間 令和2(2020)年度~令和6(2024)年度
領域代表者 小畑 弘己
所属機関 熊本大学大学院人文社会科学研究部
URL https://www.fhss.kumamoto-u.ac.jp/archaeology/earthenware/

1. 領域の概要

 日本考古学において、過去100年間、土器は主に時空を測る物差しとして重要な役割を果たしてきた。その編年の精緻さは世界にも類をみない。さらに21世紀に入り高精度の年代測定技術が発達し、より精確な年代を土器に付与することで、詳細かつ精確な時空的配置(編年)が可能となり、列島内部に限らず諸外国との年代的並行関係も把握されてきた。しかし、これら土器の中に器形や文様以外の様々な情報が眠っていることが、2005年頃より盛んになってきた土器の圧痕研究によって明らかにされた。本手法によって得られた栽培植物や家屋害虫は、人と関連の深い生物群が土器中に潜んでいることを教えてくれるとともに、縄文時代のマメ類栽培の開始時期と展開、イネやアワなどの大陸系穀物の流入時期と広がりなどを語る上で重要な根拠となった。しかし、研究の進展とともに、土器内部の潜在圧痕や多量種実・昆虫混入土器などの存在が明らかになり、胎土内の有機混入物の視点から圧痕成因の究明が必要となってきた。さらには同一型式土器の地域的な使用時間の差などにより、土器型式によって決定されてきた土器内生物群の年代が不正確であることが判明した。本領域は、このような問題を克服するために、土器の解剖学的研究の対象を従来の鉱物(無機物)から植物を軸とした有機物にシフトさせ、圧痕検出のためのCT技術や同定のためのAI技術の開発、土器内混合有機物・付着物の同定法の開発、土器包埋炭化物を軸とした生物群の高精度編年構築、土器使用法の化学的解明などを目的とする、考古学・年代学と周辺諸科学の協業による「土器総合分析学」を立ち上げた。本領域研究は、これら最新の各種研究手法を縦糸に、その手法によって得られた新たな事実を横糸に、「農耕化が人類に何を与えたか」という人類史的命題に対する答えを編み上げていく研究である。また、本研究は新たな資料学の構築のみならず、機器や方法の社会的実装実験によって、考古学を取り巻く社会の変革ももくろんでいる。本研究が成功すれば、世界をリードする総合資料学の構築が可能となるとともに、考古資料の新たな分析手法として土器総合分析学が実用化され、社会への定着が図られるであろう。


2. 公募する内容、公募研究への期待等

 公募研究は、こうした研究領域の構想を補う、またはさらに発展させる研究を歓迎する。さらに、計画研究に紐づけされた研究以外に、もう一つの大きな枠として、次世代を見据えた「未来型の考古資料学の構築」という枠で、土器に限らず、既存研究資材の再活用法や新たな分析手法の開発、考古理論の検証法、AI技術を用いた土器編年の新たな展開なども歓迎する(C領域)。

 研究項目A01はA01班のAIによる同定開発研究の基礎となるもので、多量のデータを高速に処理する機器が必要であることから300万円程度、A02は食料貯蔵・防虫法に関する世界各地の総合史料学的情報収集や炭化種実塊の成分からその形成要因を明らかにし、A02班によって同定される動植物資料の意味を解釈する際の参考となる研究であり、史料収集費または実験が中心となるため200万円程度、A03は縄文時代から弥生時代にかけての時期ごとの土器粘土素材の由来を測定や実験によって研究するため200万円程度。B01は本研究の基盤となる微量炭素による年代測定法のさらなる効率化を図る研究であり、多くの実験を伴うため300万円程度、B02は炭素14年代などの年代測定をもとに水田や貯蔵穴群・水場などの植物利用・生産に係る遺構の構築・使用や修復過程の復元を行う研究であり、多数の年代測定を伴うため300万円程度とした。

 新規領域の研究項目として、AIのDL法を用いて土器を対象に型式の認識や分類を可能にする技術を開発する研究(C01)や多様な考古資料から新たな歴史的事実を抽出したり、新たな歴史像・理論を生み出す分析法または活用法の開発研究(C02)を求める。これは試行的な部分が多いため、1件200万円程度とする。


3. 公募する研究項目、応募上限額、採択目安件数

研究項目 応募上限額
(単年度当たり)
採択
目安件数
A01 AIによる種実・昆虫圧痕同定のための基礎・多様モデル構築研究 300万円 1件
A02 先史・古代の食料貯蔵・防虫法の考古・歴史・民俗(族)学的研究 200万円 1件
A02 炭化種実塊の成分・利用に関する実験的研究 200万円 1件
A03 土器帯磁率による粘土素材由来推定 200万円 1件
B01 微量試料年代測定の効率化を図るシステム開発研究 300万円 1件
B02 高精度年代測定を利用した植物利用遺構の形成過程の細密時間方法の開発研究 300万円 1件
C01 土器型式のAI(DL法)による認知システムの開発研究 200万円 1件
C02 考古既存研究資材の再活用法・新分析手法の開発研究 200万円 1件

令和3年度科学研究費助成事業‐科研費‐(学術変革領域研究(A)(公募研究))の公募について

https://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/hojyo/boshu/1394559_00004.htm

(公募要領、計画調書のダウンロード)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/hojyo/boshu/1394561_00002.htm