領域の概要
本領域は、第一に熊本大学独自の<水俣病>事件アーカイブを熊本大学文書館と連携して構築する一方で、<水俣病>事件を媒介とした、あるいはこの事件が喚起する他者の痛みに関する研究を理論及び実践の両面において批判的かつ学際的に推進する。
第二に各領域スタッフが連携可能な国内外の研究機関あるいは研究者との共同研究を推進し、グローバルな国際研究拠点形成を目指す。
第三に<水俣病>事件被害者やその関係者が修士以上の教育研究資格をもって地域や社会に還流してゆくような仕組みを作るための具体的な計画を構想することを目標としている。
いずれも公共性、社会性が極めて高い問題を扱う新たな人文社会科学分野を開拓する挑戦的な試みとなることを目指す。
研究目的
『<水俣病>事件アーカイブと
他者の痛みに関する批判理論』
研究メンバーと研究内容
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文化人類学:文化遺産
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研究内容
<水俣病>事件研究資源アーカイブ構築を統括する一方で、アーカイブ構築自体を批判的に検証するための地域アーカイブ研究を進める。その際、<水俣病>事件が生み出した痛みを出発点として、この事件の魔術化(enchantment)を焦点化する。魔術化は近代合理性の追求(=脱魔術化)それ自体と不可分の現象であるとの観点から、人類学的呪術論およびフランクフルト学派(アドルノ、ベンヤミン)の批判理論を援用した研究を展開する。
- 専門
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社会学:環境社会学・地域社会学
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研究内容
環境被害を受けた人々の痛みは、環境社会学の重要な出発点である。特に、環境問題の重要性が広く認められている現代では、当事者のレジリエンス(resilience=回復力)発揮を可能にする、生活世界のあり方への関心が高まっている。こうした動向を踏まえ、痛みを抱えた人々を包摂しうる社会の仕組みとして、日本および東アジアの農山漁村におけるコミュニティに関心をおき、その再生にむけた研究を進める。
- 専門
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歴史学:近代日本思想史
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研究内容
専門は明治期以降の近代日本ナショナリズム。国民的統合という理念と地域的・階層的分断という実態との乖離が顕在化した事件や現象に焦点をあてた歴史学的考察をおこなっている。主要業績として『原敬と陸羯南―明治青年の思想形成と日本ナショナリズム―』(東北大学出版会、2015年)。本領域では、〈水俣病〉事件と植民地朝鮮および在日コリアン・コミュニティとの関わりをテーマとした韓国人研究者との共同研究に携わる。
- 専門
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文化人類学:歴史人類学、物質文化研究、災害研究
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研究内容
熊本県水俣市や沖縄県の石垣島を主なフィールドに、環境問題や人為的災害、そして語り難い生の侵害に直面した人びとが、その経験をどのように想起し、記憶として紡いできたのかという問題を、モノと語りのダイナミックな相互作用に注目しながら読み解いてきている。近年は、現代社会において公害や災害に向き合うことを余儀なくされてきた人びとの経験とその記憶が、新たな社会秩序にいかに結びつき得るかという課題にも取り組んでいる。