研究活動

レプリカ法の作業手順

圧痕法の中でも一般的なレプリカ法についてそのやり方をご紹介します。この方法は福岡市埋蔵文化財センター比佐陽一郎・片多雅樹の両氏が開発したものに準じています。

  1. まず土器表面の圧痕(穴)を探します。

    【ポイント】圧痕は底が深い穴が多く、表面が綺麗です。中には黒く光沢をもつものもあります。

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  2. 圧痕を見つけたら実体顕微鏡で観察します。この時、圧痕内部の土はきれいに筆などで取り除きます。やりすぎて圧痕の表面を壊してしまわないように注意しましょう。この掃除が綺麗なレプリカを作るために重要な第一の工程です。

    【ポイント】見えにくい場合、筆に水を含ませ圧痕表面を軽くなでると、観察がしやすくなります。

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  3. タネやムシの圧痕であれば、土器番号や、圧痕位置、圧痕の種類などを台帳に記録します。

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  4. 圧痕部の写真を撮影します。この作業は、レプリカ作成で万が一圧痕を毀損した場合、重要な情報源となりますので、できるだけ、撮影をするよう心掛けましょう。

    【ポイント】私たちは土器全体写真(圧痕位置をシールで示す)、圧痕部分拡大写真を撮っています。

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  5. 写真も撮り終えたら、いよいよレプリカ作成です。まず、シリコーンゴムの油が土器に染み込まないように、離型剤を圧痕部に塗布します。これが綺麗なレプリカ作りのための第二の重要な工程です。

    【ポイント】離型剤を圧痕内部に大量に塗りすぎると、厚い膜になりレプリカがうまく取れません。しかし、少なすぎてもシリコーンゴムが圧痕表面について圧痕を毀損してしまう危険性があります。適度な量を塗りましょう。圧痕部ではない部分で一度試してみるとよいでしょう。ブローを使ってきちんと細部まで離型剤を行き渡らせることも大切です。圧痕部周辺の土器表面には500円玉サイズの円を描くように塗るとよいでしょう。

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  6. 圧痕にシリコーンゴムを流し込みます。

    【ポイント】穴の端にシリコーンゴムを少量のせ、自重で圧痕内部に流れ込むように土器を傾けると、シリコーンゴム中に空気が入りにくくなります。シリコーンゴムは一気に注ぐのではなく、徐々に流し込みましょう。穴の表面が少し凹むくらいで止めておきます。

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  7. シリコーンゴムが固まりだしたらマウントをつけ、乾燥させます。

    【ポイント】シリコーンゴムを持ち上げて垂れなくなったらベストタイミングです。固まりだしたら早いので、素早くマウントに盛り、そっと圧痕部に乗せましょう。

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  8. シリコーンゴムが完全に固まったら、レプリカを外します。

    【ポイント】圧痕部の入口は細く、ゴムがちぎれやすいので細心の注意を払って引き抜きます。ちぎれてしまったら、ピンセットできれいに取り除き、再チャレンジです。

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  9. 土器表面に塗った離型剤をアセトンで取り除きます。

    【ポイント】十分に換気しましょう。

  10. 走査電子顕微鏡(SEM)で観察・写真撮影を行います。

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以上が、レプリカ法の大まかな流れです。あとはやる気と根気と、少しばかりの甘味です。

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