研究活動

圧痕法とは ―新たな手法の開発―

今、遺物として残る土器には、文様や形態だけでなく土器が作られた時代の様々な情報が残されています。その一つが圧痕です。圧痕とは、土器についたタネやムシの痕跡(スタンプ)のことを言います。これらは、土器作りの際に意図的、あるいは偶然に土器粘土中に混じり込んだものであり、土器は当時のモノをそのままパックし、現代に伝えるいわば「タイムカプセル」と言えます。

この圧痕には、土器の表面に出てきているもの(表出圧痕)もあれば、外からは全く見えないもの(潜在圧痕)もあります。よって、タネやムシが土器中にどれくらい入っているのかを、正確に知るためには土器胎土内まで見通す必要があります。これを実現してくれるのが、現代医学でも応用されるX線CTによる断層撮影技術です。この技術を用いれば、内部の状態がわかるだけでなく、タネやムシの3D画像を復元することもできます。しかし、X線CTによる潜在圧痕の検出はコスト(費用と時間)がかかり、千点から万点規模の土器を観察する土器圧痕調査には不向きであり、実用的ではありません。

そこで、軟X線機器を用いる方法を採用し、コスト削減に成功しました。新たに使用した軟X線撮影装置は、解像度・操作性ともに良く、圧痕検出作業が手軽に行えるメリットがあります。この軟X線機器を用いて土器圧痕のすべてを検出し、それらをX線CTやレプリカ法によって復元する方法を、従来の手法と区別し、「熊大方式」としました(小畑2019)。

圧痕法の新たな手法と概念

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参考文献
  • 小畑弘己・金三津道子 2015「軟X線による潜在圧痕の探査と圧痕法の革新-富山市平岡遺跡での実践-」『平成26年度埋蔵文化財年報』,30-39頁,公益財団法人富山県文化振興財団埋蔵文化財調査事務所

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